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内容と契約の注意点

平成12年より定期借家権が創設されました。

従来の借家法を改正する法律案(借地借家法の一部を改正する法律案)が平成11年秋に国会を通過し、平成12年度から定期借家権が創設されることとなりました。

俗に定期借家権と言われますが、正式には「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」という名称で、法律条文は こちら に記載してあります。

平成12年3月1日から施行されていますので、これ以降に締結される期限のある新規契約はすべて定期借家権ということになります。

従来の借家法の問題点

従来の借家法では、貸主からの明渡しには正当事由が必要(借地借家法28条)であり、老朽化したアパートの建て直しや、売却に際しての明渡しには多額の立退費用の支払いを以て正当事由とする旨の事例が多数有りました。

例えば家賃5万円の部屋の明渡し要求で1000万円の請求をされた事例などもあり、地主さんや大家さんにとっては「金は貸しても不動産は貸すな!」という言葉が定説化され、新たな借地や借家の供給が減少している傾向にありました。

特に永住型の面積の広いファミリータイプは明渡し要求が難しく、狭小なワンルームや1DKなどと比べて供給が極端に少なかったのが現状です。日本の賃貸住宅の平均面積は44平方メートル(持ち家の平均は122平方メートル)と、極端な差があります。

つまり一度貸したら返してもらうのは難しく、仮に裁判で勝っても多額の立退料を支払わなければならないのが、従来の借家法での最大の問題点でした。

平成3年度の一部改正で転勤や療養・介護などの場合には期限付借家契約が行えることとなりましたが、転勤等で留守宅を貸すサラリーマン以外はこの制度の適用を受けることが難しく、利用頻度はあまり多いものではありませんでした。

もちろん自宅以外の賃貸用マンションやアパートを所有している大家さんにとっては、まったく利用不可能な制度でした。

定期借家権の内容

  • 定期の契約
    定期借家権創設の基本理念は、民法の「借りたものは必ず返さなければならない」という原則に戻るということに他なりません。 契約期間が終了すれば必ず明け渡してもらえますので、賃貸事業は以前よりやり易くなります。
    また旧法では借家の期間は1年~20年とされており、1年未満の期間を定めた場合は民法の適用を受け、期限の定めがないものとされていました。 しかし新法では期間の定めは自由となり、1年未満の契約もまた40年・50年といったような20年以上契約も可能となりました。
  • 期限前の通知
    新法では「建物の賃貸借において、期間が1年以上である場合には、賃貸人は期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に賃借人に対して期間の満了により賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、通知が到達した日から6ヶ月間は、その終了を賃借人に対抗することが出来ない」というように規定されます。 言い換えると期間満了の6ヶ月前までに通知を出しておけば、期間満了と同時に、もしくは期間経過後でも6ヶ月待てば賃貸借を終了する事が出来るということになります。
  • 公正証書等の書面
    新法では定期借家契約は定期借家である旨を明記した公正証書等の書面によることとしています。 口頭契約ではダメです。 当社では国土交通省の標準約款に準拠した公益社団法人 東京都宅地建物取引業協会発行の「定期住宅賃貸借契約書」を使用しています。
  • 家賃改定
    現在の借家法では賃料増減額請求権というものがあります。 賃料は貸主と借主の合意によって決まりますが、世間相場からかけ離れた場合には家主は増額を請求できる制度です。増額を請求しても拒否された場合には裁判に訴え、賃料値上げが認められれば相手方はそれまでの未払い分の家賃に1割の利息を付けて支払わなければなりません。今までの長期に渡る契約では、値上げ交渉に際して原則調停それから裁判という事がよく行われていました。 新法では 「契約期間中の家賃はいくら」 というように決めることが可能で、賃料増減額請求権を行使しないという特約も有効になります。その場合、期間中は当事者が合意すれば別ですが、原則として賃料の値上げや値下げはありません。 例えば10年というような長期の場合には、当初3年間は固定で、それ以降に関しては一定のルールにより賃料を改定するような契約も行えるようになります。すべては需要と供給の関係から双方合意で決めることが可能です。
  • 施行前になされた賃貸借契約の効力
    本制度の施行前にされた建物の賃貸借契約の更新に関しては、従前の契約と同じとなります。
  • 定期借家法への切り替えに関する経過措置
    施行前にされた居住の用に供する建物の賃貸借の当事者が、その契約を合意により終了させ、引き続き新たに同一の建物を目的とする賃貸借をするときは、当分の間、定期借家権制度は適用されないものとなります。
    この経過措置は4年後(平成16年度中)に見直される予定でしたが、残念ながら今日現在までこれといった見直しは行われておりません。

施行後の市場はどうなる?

実際に新法が施行されると、かなりの割合で定期借家契約が行われることが予想されました。
今までの転勤者留守宅扱いのリロケーション契約も平成12年3月1日以降に行なわれる新規契約はすべて定期借家権となり、当社の場合ではほぼ全ての契約が定期借家権を利用して締結されています。

特に今まで建て替えで苦労したアパートの家主さんは、賃料が少々安くてもリスクの少ない定期借家権の方を選択すると思われます。
また今まで賃貸マンションやアパート経営をためらっていた地主さんも定期借家権を利用して新規事業を行ってみようと考えるはずです。
借主にとっても、従来の賃貸借より家賃が安く、しかも公庫融資建物のように礼金・更新料が不要となれば、定期借家の物件を主に探すような動きも出てくるでしょう。
新法が施行されれば正当事由でのトラブルは起きませんし、仮に起きても必ず勝てますので紛争は減少します。 また裁判費用・管理費用が減ることも考えられ、純粋に投下資本に対する利回りのみで賃貸経営を考えることが出来るようになりますので、賃料もその分低く設定可能です。

経済企画庁の予測では、定期借家権の創設で経済効果は年間8000億円と試算しており、都心へ1時間圏の家賃は8.7%低下、総住宅数は17%増えるという学者の試算も出ています。
大家さんにとっては将来的な明渡しに関するリスク回避ができるようになった反面、賃料の低下や礼金・更新料などの従来は収入となっていたものがなくなりますので、リスクの減少と引き換えに収入はある程度減る可能性があります。

そのように複雑な要素が絡み合ったことと、平成16年に予定されていた見直しが実施されなかったことから、こと居住用の住宅に限ってみると、普及率は5%程度と非常に低迷しています。

定期借家権を利用した契約の注意点

  • 礼金・更新料の扱い
    定期借家契約は、従来型の借家契約が持つ不確実性を排除するために創設された契約形態ですので、従来からの慣行的な金銭授受は避けるべきであると解釈されています。従来から更新料と礼金は判例でも法的根拠がないということで争った場合には、貸主側が敗訴していました。 更新が無いのが定期借家権ですので、更新料はもちろん受領することができず、礼金に関しても住宅金融公庫から融資を受けて建設された賃貸住宅は従来から礼金も更新料も受領してはならないのが決まりでしたので、定期借家の契約をする際には礼金は取らないこととするのが正しい解釈だとされています。ただし、今回の定期借家権では、礼金の受領が禁止されているわけではありませんので、定着するまで暫くの間は貸し手と借り手間の認識の相違が表面化することが予想され、定期借家権導入後は需要と供給のバランスがよりはっきりしてくるので、礼金をとる物件は敬遠されてなかなか決まらないという現象も起きてくる事が予想されます。
  • 賃借人からの契約解除
    事業用の建物や床面積200平方メートル以上の居住用建物を定期借家権を利用して契約する場合には、「期間内解約の特約」が無ければ賃借人からの契約解除は原則として出来ない事となっております。200平方メートル未満の一般的な居住用建物は、転勤・療養・親族の介護・その他やむを得ない事由による解除の場合には、特約が無くても1ヶ月前予告で賃借人からの解除が可能です。上記の解除理由以外の、例えば「狭くなった・新しい物件に引越したい」等の漠然とした理由では解除できない場合もありますので注意が必要です。
  • 従来型契約からの移行
    平成12年3月1日の施行日以降は、定期借家権による契約を締結することが可能ですが、当分の間は経過措置として新たな入居者としか定期借家権による契約を締結することは出来ません。 3月1日以降に更新のくる契約を定期借家権に切り替えることは出来ませんので注意が必要です。 附則第1条及び第4条により施行日から4年後に見直しをすることとなっておりますので、平成16年頃にはすべての契約で定期借家に移行できる予定でしたが、今日現在見直しは実施されておりません。仮に予定通り見直しされ、更新時に従来型から定期借家に切り替える場合には、従来型の契約時に預かっている敷金や保証金は借主に返還しなければならないこととなっております。
  • 契約時の説明事項
    定期借家権での契約を締結する場合は、定期の解釈に誤解が発生しないよう、借主に対して書面により詳しく説明しなければならず、この書面による説明を怠った場合もしくは説明不足の場合には、その契約は従来型の賃貸借契約とみなされてしまいますので注意が必要です。書面により説明しなければならない最低限の事項は下記のとおりです。
    ●契約の更新が無いこと
    ●期間の満了により賃貸借が確定的に終了すること
    ●契約の終了年月日
    注)上記の説明は媒介業者が発行と説明を行なう重要事項説明書とは別に、「貸主が自ら書面をもって説明し、書面を交付しなければならない」となっております。
    この説明は貸主から媒介業者に委任状を発行することにより、媒介業者が重要事項説明時に併せて行なうことが可能です。
  • 契約終了の通知
    契約を終了させるためには期間満了の1年前から6ヶ月前までに貸主自らが書面による通知を行なわなければ、契約を終了することはできません。2年契約だからといって、2年経ったら自動的に契約が終了するわけではなく、書面を6ヶ月前までに賃借人に渡さなければなりません。この通知を怠ると期限がきても契約を終了させることはできませんが、契約期間が終了してしまった後でも、契約終了の書面を発行してから6ヶ月経てば契約は終了します。この契約終了通知も契約時の書面発行と同じく、貸主自らが行うこととなっておりますが、委任状を発行することにより媒介業者が貸主の代理として書面発行を行なうことが可能です。
  • 契約違反と強制執行
    期間が満了して賃貸借契約が終了しても明渡さない賃借人に対しては、裁判により債務名義をとって強制執行をしなければならないことは、現在と変わりありません。この強制執行には約100万円程度の費用がかかります。定期借家権だからといって安心せず、トラブルを避けるためには契約前の入居審査が大切なことは定期借家権が導入されても変わりません。